「身一つでいらっしゃい」 飛び込んだ 文楽支える床山/朝日新聞DIGITALは良い記事だけど問題もある(^<^)

投稿者: | 2020年8月15日

なかなか光が当たることのない、文楽の床山さんの紹介記事が、朝日新聞DIGITALにアップされていました。

 人形浄瑠璃文楽の人形の髪形を結う「床山」として、大阪の国立文楽劇場で働く八木千江子さん(37)。知識も経験もゼロで飛び込んだ職人の世界で「周りの方に支えられたからこそ、続けられた」と言います。
「身一つでいらっしゃい」。採用を告げる師匠の言葉を頼りに、スーツケース一つで東京から大阪へ向かった。あれから間もなく12年。
「振り返ると前に進んでいたような感覚です」
大学卒業後、勤めた茶道教室を運営する会社は1年余りで倒産した。非常勤の公務員として働きつつ、挑戦したいと思ったのは古典芸能の裏方の職。きっかけは会社員時代に着付けを習ううち、見るようになった歌舞伎だ。美しい女形の所作や、開幕前の客席の心躍る空気を楽しむ中で「あの幕の向こうに行きたい」。思いが育っていた。
でも、求人は少なく、男性限定ばかり。性別・経験を問わない国立文楽劇場(大阪市)の床山募集を見つけたのは観劇仲間だ。実は文楽を生で見たことはなかった。でも、機会を逃したくないと応募。作文試験では、師から弟子へと口伝えされてきた文化を継承できる人になりたい――と書き、合格した。
「次につなげれば失敗ではない」
公演の度、割り当てられた役に応じて塗り直された人形の首(かしら)に、鬘(かづら)を取り付け、髪を結うのが仕事。女性初の文楽劇場の床山で、この道約30年の高橋晃子さんの下、髪飾りづくりなど毛に触れない仕事から始めた。人毛やシャグマ(ヤクの毛)で鬘の土台に縫い付ける「蓑(みの)」を編み、結髪をほどいて毛の癖を取る作業で、毛や道具の扱いに慣れる。それから、結髪の練習に進んだ。
「下手な人が結うと鬘は傷む。師匠は我慢してくれていたと思います。失敗して怒られたことはありません。『次につなげれば失敗ではない』と」
くしの持ち方や角度、髪の根元を結い束ねる元結(もっとい)の締め具合一つで、形は決まらなくなる。その感覚は、何度も繰り返して自分の体にしみこませるしかない。1公演で用いる首は40~60ほど。遊女の豪華な髪形などは1日で作業が終わらない。大阪や東京での定期公演に地方巡業と、毎月どこかで舞台があるから、1年は瞬く間に過ぎていく。
同じ髪形でも、年齢や役柄に応じて髷(まげ)の形が異なる場合もある。人物を表す重要なサインだからこそ、心がけるのは「その役らしく」結うことだ。劇中、人形の顔にふとかかった鬢(びん)のほつれや、乱れ髪から役の感情が立ち上る――。そんな瞬間、自分が舞台に携わることのできる喜びを感じる。
時間があると、客席からも舞台を見る。「お客様の目線が知りたくて。自分も見ることが好きだったので、その気持ちは失いたくないと思います」(増田愛子)
     ◇  
東京都出身。東京・国立劇場で9月5~22日に開かれる公演に向け、40ほどの首の髪を師匠と2人で結う。公演は4部制。第1部(午前11時開演)「寿二人三番叟(さんばそう)」「嫗(こもち)山姥(やまんば)」▽第2部(午後1時45分開演)「鑓(やり)の権三(ごんざ)重(かさね)帷子(かたびら)」▽第3部(午後5時開演)「絵本太功記(たいこうき)」(夕顔棚の段/尼ケ崎の段)▽第4部(午後7時45分開演)「解説 文楽をはじめよう」「壺(つぼ)坂観音霊験記」(沢市内より山の段)。国立劇場チケットセンター(0570・07・9900)。

珍しい女性の文楽の床山を紹介するということで記事になったことは想像できるのですが、こういう機会も貴重。

人形の髪を結っている動画付きであるのもすばらしいですね。

それにしても、動画撮影中にスチールのシャッター音のうるさいのは、そろそろどうにかならないのかな・・・。デジカメはすでに音が消せるわけで、カメラパーソンが撮っている満足感だけで音を発しているのは時代遅れのメカ音痴としか思えませんしね。確認は音のしない方法ですればいいので、シャッター音の暴力性に配慮しない報道って、やっぱり遅れていると思います。

そういえば、昔の舞台のカメラパーソンは、シャッター音の静かなライカMしか許されなかったという話を聞いたことがあります。マナーというか、リスペクトにも通じる問題ですよね。

参考:https://digital.asahi.com/articles/ASN845177N82PTFC006.html?_requesturl=articles%2FASN845177N82PTFC006.html&pn=4