元宝塚月組の組長(組のまとめ役)を務めた越乃リュウさんが、文楽鑑賞をした感想を綴っています。
宝塚退団後、文楽鑑賞に誘われていても、なかなか行こうという気持ちになれなかったという越乃さん。
ようやく「観に行ってみよう」という気になっての訪問。
舞台の幕が開き、人形が見えた瞬間、
「あ、私大丈夫だ!」
感覚的に、見た瞬間そう思いました。
この言葉から察するに、舞台に生身で出演する側だった彼女ならではの、人形劇への先入観として、自分が観客として演技に入り込めないのではないかという不安があったのではないでしょうか。
しかし、杞憂に終わります。
文楽人形が4体出ている場面で「操縦士が12人」という表現は独特ですね(笑)。
途中で太夫が代わるという文楽独特の進行にも驚かれています。
さらに、舞台での合わせ稽古をしないことにも驚かれていました。宝塚では朝から晩まで1ヵ月は稽古するから、と。
実は、こうした言語化やマニュアル化できない稽古方法が、文楽研修生の不人気につながっているとも言えそうなのですが。。。
吉田玉助さんのトークショーで、「いまの若い人は動画で済ませようとする。わからないことは先輩に聞きなさいと言ってもなかなか来ない」と嘆かれていましたが、お互いに芸能を伝えていくための歩み寄りが必要なのではないかと思ったひと幕でした。
例えば、口伝のスタイルは残すとして、ワークショップのような質疑応答と実演を交えた稽古方法を取り入れるなど、やれることはあるような気がします。
まあ、外野がとやかく言っても仕方ないことですが、文楽は特に三業をシンクロさせるというコラボレーション型の芸能なので、どこか一角が欠けると終わってしまうだけに、心配です。