能「江口」は遊女に宿を断わられた西行というエピソードの真実を明かす儚げな物語

投稿者: | 2020年7月25日

現在の大阪市東淀川区にあったという「江口の里」にまつわるストーリーです。

この地は古くから水上交通の要衝として栄え、都から貴人も訪れる場所だったため、高級娼館があったそうです。

帰属を相手にするため、江口の遊女は教養もなければならなかったとか。

この娼館エリアの長だったのが「江口の君」で、西行法師が一夜の宿を所望したのに対して、これを断わったというエピソードが伝えられています。

こうした前提があって、都に来ていた旅僧たちが天王寺参詣のついでに江口の里を訪れ、西行と江口の君のエピソードを詠んだ歌を口ずさみます。

そこで女が現われて、このエピソードが「出家に対する遠慮」によるものだと、江口の君の弁護をするのです。

そして、僧が誰何すると、江口の君の幽霊だと明かして消えてしまいます。

このあと僧は、江口の君が普賢菩薩の生まれ変わりだと知ることになり、江口の君を弔うことにします。すると、屋形船に乗って江口の君が現われ、舞を舞って、普賢菩薩に変身して西の空へ飛び立っていく、というストーリーです。

後半、再び姿を現わした江口の君と侍女たちが、絢爛豪華でありながら世の因果応報や無常を感じさせる場面が見どころになっています。

参考:演目事典「江口(えぐち)」|the能com
https://www.the-noh.com/jp/plays/data/program_101.html

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